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舞台『プロレス超初心者ですが未来を託されました』観劇記(2017.9.29)

 29日に観劇してきた『プロレス超初心者ですが未来を託されました』が大好評で閉幕した。確かに素晴らしい作品だったし、見どころも多くあった。プロレスをテーマにしながらもその周辺にあった世相事情までも表現するMARUの演出は驚愕するところでもあった。

 プロレスの創始者といえば力道山。彼は北朝鮮にルーツを持つ。在日。こういう難しいテーマをさりげなく織り込むことができるのがMARUの得意技なのだが、彼女も台湾とのハーフだというルーツを持つがゆえなのかは本人にしかわからないだろうが。

 劇の内容を振り返ってみよう。舞台は1954年の頃。初めて米国人の女子プロレスラーが来日した頃のお話。舞台となったキャパレーではガーターマッチというプロレスの亜種のようなものが売りだった。そこにやってきたのが浮浪者の姉弟。この姉は昔このキャバレーで働いていた。弟は不思議な能力を持っていた。姉弟の兄がこのキャバレーで働いており、悪いグループのリーダーのチャンメイと恋人関係にあった。

 オーナーの佐藤家の夫妻が米国から帰国してきて、見てきた女子プロレスの話をする。その魅力に取りつかれた彼はこの店でもやってみようと提案し、さっそくトレーニングが開始された。浮浪者の姉・宝子も参加することになった。

 前後してしまうが、この話のスタートはこの宝子と弟の兄の不審な死のシーンから始まる。そのストーリーも絡めて話は進んでいく。

 プロレスのトレーニングが始まる。なんとかみんなついていっているような感じ。で試合のシーンが悪人の登場とともに始まる。この日出演したのはWAVEの桜花由美選手とKAIENTAI-DOJOの洞口義浩選手。そしてDDTの勝俣瞬馬選手だった。一番前に座っていたので試合のシーンの迫力はすごいものだった。桜花選手のビックブーツ、勝俣選手の空中技などは見せ場十分なものだった。

桜花由美。彼女の出す迫力は魅力的。

 女子プロレスが始まった。人気は上々で、キャバレーは繁盛する。宝子はその中でもスターになっていく。そしてわかっていく姉弟の兄の死の真相もわかった。ここでは書かないが悲しい結末だった。そのあとに歌が流れる。その中の恋人役のチャンメイ(岩井杏加)の演技は非常に悲哀を誘う好演技だった。

岩井杏加。まだまだ新人だが熱演が光った。

 Show must go on.女子プロレスは続いていく。そして主人公の宝子は女子プロレスの未来を託される存在となったところでエンディング。

 プロレスとキャバレー、そして在日という戦後当時でいう裏稼業を見事にエンタテインメントに持っていったMARUさんの演出はさすがでお見事ですの一言に尽きる。もっとドロドロにもできたと思うけどそれではエンタテインメントにはならないので、そのさじ加減も見事だった。

 主役の宝子役の志田光は現在の女子プロレスの主役の一人だ。現在はMAKAIに所属しているが、レスラーとしては参戦する団体では主役級の活躍を見せている。その彼女がこの役を演じるのは大きな意味がある。試合シーンもそうだが、彼女がプロレスラーになった経緯も含めて、心象風景を演じきれるのは彼女をおいて他にはいないだろう。

主役の志田光。コルバタ志田組の核。

 脇を固めた役者陣もお見事だった。チャンメイ役の岩井杏加の存在感は素晴らしく、恋人を喪った悲哀と悪役の両面を演じ分けていたところが素晴らしかった。日向小陽の役ところの美子も欠かせないスパイスになっていた。

美子役の日向小陽。コルバタの舞台では欠かせない存在。

 
 さらに歌とダンスもこの舞台では欠かせない。感情の動きを表現するのに大きなものになっていた。艶やかでかつ悲哀を含んだそれは観るものを魅了せずにはいられなかったはずだ。

 それにプロレスの試合を入れた、コルバタだからできる演出は迫力満点だった。自分が見た日は桜花由美のドスの効いた存在感。舞台に慣れてきている洞口義浩の旨さ、勝俣瞬馬の華やかさはそれぞれが引き立てあっていた。リング上とはまた違う舞台という場だからこそできたものだった。これもまた素晴らしいなと思わざるを得なかった。

 そして、先にも書いたが志田光のレスラーとしての華と役者としての華を引き立てていき、この舞台が大成功になったのだろう。魔界などで演技とプロレスの両方で研鑽を積んだ彼女でなければできない座組だったと言えるだろう。プロレスファンと演劇ファンの両方を満足させる荒技をやってのけるその魅力を引き出した演出は素晴らしい。これもMARUが元プロレスラーでどう光を当てたら映えるかを熟知しているからなのだ。

 プロレスラーと演劇をミックスさせたコルバタ志田組の魅力はその集合体なのだ。

 来年もこの座組での舞台があると聞いた。もちろん今から楽しみだし、ワクワクしている。自分にとっては最高のエンタテインメントだと言えるだろう。それが実現できるコルバタというくくりがあってよかった。

 これを今書いている瞬間が、振り返りであり、楽しみを脳内再生させる場でもある。演劇とプロレスに出会って良かったなぁと思う最高の瞬間なのである。



 

 

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